近所の人が朝一番に事務所に来られました。顔面蒼白で只事ではないのが直ぐ分かりました。儲け話にうかつにも乗ってしまって大金を騙し取られたらしいとの事でした。
話が旨過ぎるのは気付いていたが二十年来の知り合いからの勧誘で信用してしまった、その知人も大金を渡してしまったと。金額の大きさ、集金の手法など、とても行政書士が対応出来るケースではないので佐賀市の弁護士を紹介する事になりました。日頃、暮らしや時には政治向きの事などしっかりとした文章を書かれる人なので余計に驚きました。しかし、人を騙して大金を撒き上げる、酷い事です。
以前に読んだ短編小説を思い出しました。真面目一本の父親ですが不作で家族に食べさせる物がない。雪の夜、生まれて初めて庄屋の家に盗みに入る。飢えをしのぐだけの僅かな米を抱えて歩く父親の足跡を何年かぶりの大雪が消していく。いい読後感を覚えました。今回相談のあった件とは真逆の世界です。
自分も何も持ちませんが、人間という頼りない生き物の唯一の重心である誠実さだけは持ち続けたいと思っています。